『THE BAND』5巻まで読んだ感想|『BECK』とのつながりと二人の宣戦布告

『THE BAND』5巻まで読んだ感想―『BECK』とのつながりと二人の宣戦布告 青春

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※この記事では『THE BAND』第5巻までの設定やライブの雰囲気に触れますが、その後を左右する大きなネタバレは避けています。

ハロルド作石さんの『THE BAND』を、最新の第5巻まで購入して読みました。

いじめや孤独を抱えていた新木友平が、親友のマタローや三日月形のギターと出会い、音楽の世界へ踏み出していくバンド漫画です。

『BECK』を思い出させるロックシーンと、友平とマタローが別々のバンドへ進んでも、音楽を通じて互いの成長に影響していく関係に惹かれて読んできました。第5巻では、ダイブリのレコード、新曲NSB、そして最後の宣戦布告が重なり、『THE BAND』が本格的な下克上へ向かい始めたと感じます。

ギターを手にした友平の世界が動き始める

主人公の友平は、小学生のときに初めてバンドのライブを体験します。ステージに強く刺激を受けますが、その気持ちをすぐに行動へ変えられるわけではありません。

学校ではいじめを受け、自分がいなくても世界は回り続けるような孤独を抱えています。そんな友平の世界を動かすのが、唯一無二の友人であるマタローとの再会と、叔父から譲り受けた一本のギターです。

友平は、最初から何でも弾ける天才ではありません。うまくいかない初舞台も経験しながら、それでもギターを手放さず、少しずつ自分の音を見つけていきます。

完成された演奏を見せるのではなく、まだ技術が足りない少年の音に、周囲が何かを感じ取る。その始まり方に、ハロルド作石さんのバンド漫画らしさを感じました。

『BECK』を思い出させるロックシーンとダイブリのレコード

『THE BAND』のライブシーンを読んでいると、同じハロルド作石さんが描いた『BECK』を思い出します。

漫画なので実際の音は鳴りません。それでも、演奏前の緊張、ステージに立った人物の表情、観客の反応が重なることで、会場の音量や熱気まで想像できます。

第5巻では、その感覚がさらに強くなるものが登場しました。『BECK』に登場した世界的バンド、ダイイング・ブリード、通称ダイブリのレコードです。

別作品として始まった『THE BAND』の世界に、『BECK』で知っている名前が自然に置かれている。物語を理解するために『BECK』の知識が必要な場面ではありませんが、読んできた人には二つの作品が同じ音楽の歴史を共有しているように見えます。

私はダイブリのレコードが出てきたことで、『BECK』とのつながりを感じて感動しました。大げさに過去作を説明するのではなく、一枚のレコードによって世界がつながる見せ方も印象に残ります。

友平とマタローをつなぐ音楽と友情

友平とマタローの友情も、第5巻まで読んで強く印象に残った部分です。

二人は同じライブに心を動かされたことから仲良くなり、離れていた時間を経て、音楽によって再びつながります。マタローは友平より先にギターを学び、再会後は友平に演奏を教える存在になります。

ただし、いつまでも二人だけで同じ場所にいるわけではありません。高校へ進むと、それぞれが別の環境でバンド活動へ向き合います。

同じバンドに所属していなくても、相手の音を知っていることが刺激になる。ずっと隣にいる関係だけではなく、別々の場所で成長しながら互いの存在が支えになる友情が描かれています。

仲間だから何もかも分かり合えるわけではなく、音楽への考え方や進む速さにも違いがあります。それでも、二人の出発点には同じライブの記憶がある。そのつながりが、物語の先を読みたくなる理由になりました。

新曲NSBがドラカリスの流れを変える

第5巻では、友平が新しい曲を作ることになります。

ドラカリスは「ディス・イズ・マイホーム」によってライブハウスでの評価を上げ、名古屋の実力派バンドが集まるイベントへ参加します。そこでさらに観客を惹きつけるには、次の曲が必要になります。

しかし、友平は簡単に次の曲を作れません。そこで作曲のきっかけになるのが、マコちゃんが若いころに聴いていたダイイング・ブリード、通称ダイブリの音楽でした。

マコちゃんは、かつて有名なゲーム会社で働いていました。これまで詳しく語られてこなかったのが、なぜその仕事を辞めたのかという理由です。第5巻では、その疑問がダイブリの音楽と結びついて回収されます。

当時のマコちゃんは働きづめで、心身ともに疲れ切っていました。そんな状態の彼に再び生気を与えたのが、ダイブリの音楽です。その影響もあり、マコちゃんは会社を辞める決断をします。

友平は、マコちゃんを救ったダイブリの曲を聴き、そのコード進行から作曲のヒントを得ます。そうして完成させ、初披露する新曲がNSBです。

この流れが印象に残るのは、友平が有名な曲をただまねしたわけではないからです。かつてマコちゃんの人生を動かした音楽から受け取ったものを、自分たちの新しい曲へ変えています。

一本のムーンサルトを友平へ渡したのもマコちゃんでした。第5巻では、楽器だけでなく、自分を救った音楽の記憶まで友平へつながります。マコちゃんから渡されたものが、友平の手でNSBという曲になり、今度はドラカリスの観客を動かしていきます。

NSBをきっかけに、ドラカリスのライブへ足を運ぶ客は少しずつ増え始めます。

一度だけ注目されて終わるのではなく、新しい曲が次の客を連れてくる。友平の内側から生まれた音楽が、バンドの外側へ届き、目に見える変化を起こす場面でした。

最初は人前に出ることさえ難しかった友平が、自分で作った曲によってドラカリスを前へ進めている。演奏する側から、バンドの未来を作る側へ変わり始めたことが伝わります。

友平とカスミンの宣戦布告から始まる下克上

第5巻のドラカリスは、「ディス・イズ・マイホーム」で評価を上げたところから、名古屋の実力派バンドが集まる「NEXT薫風ジェネレーション」へ進みます。しかし、イベントへ出演できるだけでは、まだ大勢の中の一組です。そこで必要になるのが、初めて観る客を立ち止まらせ、次のライブにも呼び戻す新しい曲でした。

友平が生み出したNSBの初披露をきっかけに、ドラカリスの客は少しずつ増え始めます。友平の曲がメンバーの中だけで評価される段階を越え、ライブハウスの外側にいる人を実際に動かしたことになります。

この変化があるからこそ、巻末の宣戦布告にも勢いがあります。何の実績もないまま強がっているのではなく、自分たちの曲で客を増やせるという最初の手応えをつかんだ直後だからです。

そのドラカリスが次に見据えるのは、かつてのバンド仲間が加入している、すでに売れているバンドです。相手は知名度も実績も上であり、ドラカリスにとっては簡単に並べる存在ではありません。一方で、まったく関係のない人気バンドでもなく、過去の仲間が向こう側にいるからこそ、現在のドラカリスが何を鳴らせるのかをぶつける意味があります。

そこで友平が伝えるのが「いつかボコボコにするんで。待ってて下さい!」という言葉です。さらにカスミンも「いつか絶対ボコボコにするから」と続きます。丁寧な目標や憧れではなく、二人が相手を明確に倒す対象として見た宣戦布告でした。

友平の言葉には「いつか」と「待ってて下さい」が入っています。今はまだ相手が上にいることを認めながら、それでも必ず追いついて倒すという意志が伝わります。カスミンが「絶対」と重ねることで、それは友平一人の勢いではなく、ドラカリスの目標へ変わります。

過去の因縁を会話だけで整理するのではなく、これから作る曲とライブで決着をつけようとするところが、この作品らしいと感じます。

第5巻の序盤では、ドラカリスはイベントで客を惹きつける側を目指していました。それがNSBの初披露を経て、最後には売れているバンドを追い落とす側へ意識が変わります。友平の新曲、増え始めた客、過去のバンド仲間との因縁が一本につながり、「次はあのバンドを倒す」という目標が見えました。

二人の「ボコボコにする」は、ただ荒っぽいだけのせりふではありません。ドラカリスが自分たちの音に手応えを持ち、格上へ挑む覚悟を共有した宣戦布告です。第5巻は、新曲を作る巻であると同時に、ドラカリスの下克上が始まる巻だったと思います。

三日月形のギター「ムーンサルト」が友平の象徴になる

友平が弾く、三日月形の変わったギターも本作を象徴する存在です。

モデルになったのは、河合楽器がかつて製造していた実在のエレキギター「ムーンサルト」です。三日月形のボディーと、指板に並ぶ月の満ち欠けが強い印象を残します。

人前へ出ることに苦しんでいた友平が、誰とも違う形のギターを抱えてステージに立つ。その姿には、まだ自信のない少年が、自分だけの武器を手にしたような格好よさがあります。

珍しい楽器を登場させるだけでなく、持ち主の個性や物語と結びつけるところも、楽器へのこだわりを感じる部分でした。

ムーンサルト開発者・稲見隆博氏×漫画家・ハロルド作石先生 特別対談(河合楽器公式)

『THE BAND』はこんな人におすすめ

  • 『BECK』のロックシーンや世界観が好きだった人
  • 音が聞こえてくるようなライブ描写を楽しみたい人
  • 初心者が曲を作り、客を増やしていく過程を読みたい人
  • 音楽でつながる少年たちの友情に惹かれる人
  • 実在するギターやレコードが登場する作品が好きな人
  • 無名のバンドが格上へ挑む下克上を追いたい人

まとめ

『THE BAND』は、孤独を抱えていた友平がギターと仲間に出会い、自分の音で世界と向き合い始めるバンド漫画です。

第5巻まで購入して読み、特に印象に残ったのは、『BECK』を思い出させるロックシーンと、別々のバンドで活動する友平とマタローが、音楽を通じて互いの存在を意識しながら成長していく関係でした。ダイブリのレコードが登場したことで二つの作品のつながりを感じ、新曲NSBが客を呼び始める展開からは、友平とドラカリスの成長が伝わってきます。

そして最後に友平とカスミンが交わす宣戦布告は、これから始まる下克上を表していました。『BECK』が好きだった人はもちろん、無名のバンドが自分たちの曲で格上へ挑んでいく物語を最初から追いたい人にもおすすめしたい作品です。

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