※この記事では『スーパーの裏でヤニ吸うふたり』第9巻までと、放送中のテレビアニメ版の雰囲気に触れます。物語の結末や関係性の決定的な変化など、大きなネタバレは避けています。
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地主さんの『スーパーの裏でヤニ吸うふたり』は、仕事に疲れた会社員の佐々木と、スーパーで働く山田、店の裏の喫煙所で出会う田山の交流を描いた漫画です。
現在発売されている第9巻まで、全巻購入して読みました。
最初は、正体に気づかない佐々木を田山が面白がってからかう会話が中心です。しかし読み進めるほど、二人だけで煙草を吸う時間が、普段は言えない本音や過去を置ける場所へ変わっていきます。
ゆっくりした会話の面白さだけでなく、傷を抱えた二人が互いの存在によって少しずつ前へ進むところが、特に好きな作品です。
からかいから始まった二人の関係
物語の始まりでは、佐々木にとって山田さんは、仕事帰りに立ち寄るスーパーで出会える癒やしの存在です。一方の田山は、店の裏の喫煙所へ佐々木を招き、少し意地悪な言葉で反応を楽しみます。
読者には山田と田山の関係が早い段階で示されますが、佐々木はなかなか気づきません。この認識のずれと、田山に振り回される佐々木の反応が、序盤の大きな笑いになっています。
ただし、田山のからかいは次第に意味を変えていきます。面白半分だったはずのやり取りに、佐々木のことをもっと知りたい気持ちや、自分に気づいてほしい気持ちが混ざり始めます。
それでも急に素直な恋愛関係へ進まず、煙草一本分の会話を何度も重ねていく。この遠回りな進み方が、二人らしく感じられます。
強そうで不器用な田山さんのような女性が好き
一番好きなキャラクターは田山さんです。強気な服装や言葉遣いで佐々木をからかいますが、実際には相手の表情や疲れをよく見ています。
佐々木が無理をしているときには、正面から心配するのではなく、冗談や少し乱暴な言葉に包んで気遣います。世話焼きなのに、自分が心配される側になると弱さを隠そうとするところも印象的です。
山田として働いているときの明るく丁寧な姿と、田山として煙草を吸っているときの気の抜けた姿は、正反対に見えます。しかし、どちらにも人をよく見ている優しさがあります。
見た目や態度は強そうなのに、本音を伝えることには臆病です。からかいながらさりげなく支え、自分の寂しさは簡単に見せない。そんな格好よさと不器用さを併せ持った、田山さんのような女性が好きです。
第6巻の七夕回に表れる、言葉にしすぎない優しさ
特に印象に残っているのが、第6巻に収録されている七夕の回です。
七夕というと、願い事や恋愛を分かりやすく結びつけやすい行事です。しかし本作では、二人の気持ちを大きな台詞で説明するより、いつもの会話と小さな行動から相手を思う気持ちが伝わってきます。
佐々木は鈍感で、田山も本音をそのまま口にしません。それでも、互いに相手のことを考えているのは読者には分かる。この「本人たちより読者のほうが気持ちに気づいている」もどかしさがよく表れた回でした。
派手な告白や急展開がなくても、一緒に過ごした時間が積み重なっている。七夕回は、本作の静かな恋愛描写がよく分かるエピソードだと思います。
互いの過去を知り、本音へ踏み込んでいく
巻を重ねると、二人の会話は仕事帰りの雑談だけではなくなります。佐々木と山田が現在の生き方を選ぶことになった過去や、今も残る傷が少しずつ見えてきます。
二人とも他人には優しい一方で、自分のことになると後ろ向きです。過去の経験から自分の可能性を狭め、大切なことほど簡単には話せません。
だからこそ、相手の事情を知った後の言葉には重みがあります。問題を代わりに解決するのではなく、本人がもう一度前を向くためのきっかけを渡す。喫煙所で交わしてきた何気ない会話が、ここで二人を支える関係につながっていきます。
最初のからかい合いを知っているほど、互いの内面へ踏み込めるようになった変化が感じられました。
第9巻で大きく前進する佐々木と、新たな壁に向き合う山田
第9巻では、佐々木が過去の経験や仕事に対して、かなり大きく前進します。
佐々木は目立つことを好まず、自分の成果を素直に受け取れない人物でした。しかし、これまで避けていたものと向き合い、自分が積み重ねてきた仕事を受け止めようとします。
恋愛面だけを進めるのではなく、仕事を通して佐々木自身が変わっていく点がよかったです。田山との出会いによって得た安心感が、喫煙所以外の人生にも影響しているように感じられます。
山田も、一度は諦めた自分の夢へ再び向き合おうとします。こちらも前進しかけますが、簡単に希望どおりには進まず、新たな問題が発生します。
詳しい内容は伏せますが、過去を乗り越えたらすべて解決するのではなく、進んだからこそ次の壁が見える展開です。第9巻まで読んでも、二人の関係とそれぞれの人生の両方を見守りたくなりました。
アニメで際立つ山田と田山の二面性
テレビアニメ版では、原作の魅力だった山田と田山の違いが、声と動きによってさらに分かりやすくなっています。
星希成奏さんは、接客中の山田の明るく柔らかな声と、喫煙所にいる田山の低く気の抜けた声を大きく演じ分けています。同じ人物だと知っていても、佐々木が別人だと思う感覚をアニメでは声から楽しめました。
田山が顔を近づけたり、佐々木の反応を見ながら笑ったりする場面も、動きがつくことでからかいの距離の近さが強調されています。一方で、二人が黙って煙草を吸う時間や、夜のスーパー裏の落ち着いた空気も残されています。
オープニングは、ずっと真夜中でいいのに。が担当しています。煙のようにつかみにくい二人の関係を感じさせる楽曲が、作品のじれったい距離感によく合います。
エンディングのimase「Fiction」は、互いの素性をよく知らないからこそ本音を話せる関係を意識して作られた曲です。田山という別の顔から始まった二人を、そのまま音楽にしたように感じられました。
原作の会話の間と空気感を大切にしながら、田山さんの表情や声の魅力を加えたアニメになっています。
『スーパーの裏でヤニ吸うふたり』はこんな人におすすめ
・大人同士のゆっくりした関係を読みたい人
・からかいながら相手を気遣う女性が好きな人
・会話の間や言葉にしない感情を楽しみたい人
・仕事や過去に向き合う人物の変化を見守りたい人
・派手な展開より日常の小さな前進が好きな人
・原作とアニメの両方で人物の違った魅力を味わいたい人
まとめ
『スーパーの裏でヤニ吸うふたり』は、スーパー裏の喫煙所で交わされる会話を通して、二人の距離が少しずつ変わっていく作品です。
最初は田山が佐々木をからかう関係でしたが、やがて互いの本音や過去へ踏み込み、前へ進むために支え合う関係へ変わります。第6巻の七夕回で見せる言葉にしすぎない優しさや、第9巻で見せる佐々木の前進が特に印象に残りました。
強そうに見えて世話焼きで、自分の弱さには不器用な田山さんのような女性が好きです。第9巻で山田の夢に新たな問題が見えてきたことも含め、二人がこれからどのように進んでいくのか楽しみにしています。


