『アオアシ』全40巻を読んだ感想|納得できなかったサイドバック転向の意味

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※この記事では『アオアシ』全40巻の展開やアニメ版に触れます。試合結果や結末などの大きなネタバレは避けています。

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小林有吾さんの『アオアシ』を全40巻購入し、最終巻まで読みました。

私自身、学生時代はキーパー以外のポジションを経験しました。ポジションに対する考え方は人によって違うと思いますが、当時の私は、フォワードやミッドフィルダーといった攻撃的なポジションからディフェンダーへ転向することに、かなり抵抗がありました。プライドもあったのかと思います。そのため、アシトがFWからサイドバックへの転向を告げられたときは、正直、納得できないというか、試合では得点という結果も出していたのに、なぜFWではなくサイドバックなのだろう、と疑問に感じました。

しかし物語が進むほど、これは単なるコンバートではなく、アシトの能力を生かし、エスペリオンが目指すサッカーを具現化するために必要な選択だったのだと思うようになりました。

最初は納得できなかったサイドバック転向

得点を取ることに強いこだわりを持っていたアシトにとって、FWは夢と直結したポジションでした。そこからDFへの転向を告げられる展開は、本人だけでなく、アシトをFWとして応援していた読者にも厳しいものです。

私も当初は、アシトの攻撃面の長所を奪うような変更に見えました。これはあくまで私個人の感覚ですが、攻撃的なポジションからディフェンダーへ移ることには、前向きになりにくいところがありました。サイドバックには守備を重視する選手もいれば、上下動や組み立て、中央への進出を得意とする選手もおり、役割はチームによって大きく異なります。それでも、FWを目指してきたアシトが動かされることには強い抵抗を感じました。

『アオアシ』が面白いのは、転向を監督の一言だけで正解にしないところです。アシトが失敗を重ね、守備の原則や味方との距離を学ぶ過程を通じて、なぜこのポジションなのかを具体的に見せていきます。

イーグルアイをチーム全体へつなげるポジション

アシトの大きな武器は、フィールド全体を俯瞰して選手の配置を捉えられる、いわゆる「イーグルアイ」です。

前線だけでプレーするより、後方から全体を見渡し、味方を動かしながら攻撃にも参加するほうが、その視野を広く使えます。サイドバックに置かれたことで、アシトの能力は個人の得点力だけでなく、チーム全体を前進させる力へ変わっていきました。

エスペリオンが目指すのは、全員が考えながら立ち位置を変え、ボールと人を動かすサッカーです。その考えをピッチ上で具現化するには、後方から試合を見て攻撃を組み立てられる存在が必要だったのでしょう。

最初は納得できなかった転向が、巻を重ねるほどアシトの可能性を広げる選択に見えてくる。この印象の変化は、全40巻を通して特に面白かった部分です。

青森星蘭戦での覚醒と、同じ視野を持つ者同士の戦い

特に印象に残っているのは、プレミアリーグ優勝を懸けた青森星蘭戦です。

この試合では、アシトと同じように広い視野を持つ北野蓮が立ちはだかります。同じ「イーグルアイ」を持っていても、積み重ねてきた経験や試合の支配方法は同じではありません。相手の配置を読むだけでなく、読んだ先で何を選択し、周囲をどう動かすのか。同じ能力を持つ者同士だからこそ、違いがはっきり見える対決でした。

その中でアシトが、それまで身につけてきた守備、連携、俯瞰の視野を一つにつなげていく姿には、単なる好プレー以上の覚醒を感じます。サイドバックへの転向から続いてきた迷いや学びが、この大舞台で形になったことに強く引き込まれました。

阿久津との関係が変わっていく

アシトと阿久津の関係も、本作を通して印象に残りました。

当初の阿久津はアシトにとって、実力でも態度でも大きな壁でした。簡単に理解し合える相手ではなく、読んでいて苦しくなる場面もあります。

それでも同じチームで戦い、それぞれの過去や背負っているものが見えてくるにつれて、二人の関係は少しずつ変化します。急に仲良くなるのではなく、プレーと行動を通して互いを認めていくため、その進展には説得力がありました。

青森星蘭戦では、この二人が積み重ねてきたものも大きな力になります。個人の成長だけでなく、簡単には交わらなかった選手同士がチームになるまでを描いているところが、『アオアシ』らしいと思います。

トップチームで見えたプロとアマチュアの差

アシトがトップチームの練習へ呼ばれる展開では、ユースの試合とは異なる緊張感がありました。

プロは上手な選手というだけではありません。サッカーで生活し、結果が契約や家族の暮らしにもつながる世界です。アシトがその現実に触れて抱える葛藤からは、憧れだけでは語れないプロとアマチュアの差が伝わってきました。

作者の小林有吾さんは多くのプロ選手へ取材し、その言葉が作品の力になっていると語っています。トップチーム編で感じる現実味は、こうした取材と監修に支えられているのでしょう。

戦術の説明だけでなく、選手が何を恐れ、何を懸けてプレーしているのかまで描くことで、プロの世界が急に近く、それでいて厳しい場所に見えました。

最終巻のバルセロナ戦はまさに死闘

最終40巻では、バルセロナユースとの試合が決着します。細かな結果には触れませんが、最後までどちらへ転ぶか分からない、まさに死闘でした。

世界の頂点を基準にしてきたバルセロナと、日本の育成組織で成長してきたエスペリオン。その対戦は一つの試合であると同時に、日本サッカーが積み重ねてきた歴史と、ここまで成長した現在地を描くものにも見えます。

一方で、高校2年生になったアシトがこの先どこまで進むのかは、読者の想像に委ねられています。すべてを描き切らない終わり方には寂しさもありますが、アシトの物語が作中の外でも続いていくような余韻がありました。

『アオアシ ブラザーフット』の連載もあるため、この世界や登場人物たちに再び出会えることを楽しみにしています。

アニメ版の感想とSuperfly「Presence」

2022年に放送されたアニメ第1期は、アシトの勢いと未熟さ、ユースへ入ってから味わう挫折を、声と動きによって分かりやすく伝えてくれました。試合中の配置や選手同士の距離も映像になるため、漫画で描かれた戦術を別の角度から理解できます。

第2クールのオープニングテーマ、Superflyの「Presence」も印象的です。悩み、もがきながら前へ進む少年を応援する気持ちで制作された曲で、力強い歌声と疾走感がアシトの成長によく合っています。仲間と競いながら前進する映像も含め、作品への入口として優れたOPでした。

そしてTVアニメ『アオアシ Season2』は、2026年10月4日からNHK Eテレで毎週日曜午後5時に放送予定です。全24話のうち、まず前半12話が第1クールとして放送され、Aチーム編が描かれます。OPは10-FEET、EDはヒグチアイと発表されています。

阿久津や栗林たちがいるAチームへ上がったアシトが、これまでとは違う速度と強度にどう向き合うのか。原作で印象的だった関係性や試合が、アニメでどのように表現されるのか楽しみです。

まとめ

『アオアシ』は、才能のある少年が活躍するだけではなく、ポジション、戦術、仲間との関係、そしてプロになる覚悟を細かく描いた全40巻のサッカー漫画です。

私は学生時代にキーパー以外のポジションを経験していたこともあり、アシトのサイドバック転向には最初、良い印象を持てませんでした。しかし、イーグルアイをチーム全体へつなげ、エスペリオンのサッカーを具現化する役割を考えると、アシトだからこそ必要だった変更だと理解できました。

青森星蘭戦での覚醒、同じ視野を持つ北野との戦い、阿久津との関係の進展、トップチームで知るプロの厳しさ。そして、日本サッカーの歩みまで感じさせるバルセロナ戦。積み重ねてきた要素がつながる瞬間に、本作の面白さがあります。

高校2年生になったアシトの先は描き切られていません。それでも、彼なら考え、悩み、また前へ進むはずだと思えるところまで成長を見届けられた作品でした。

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