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※この記事では『ダンス・ダンス・ダンスール』第33巻のコンテンポラリー審査や、登場人物の感情、巻末から予想できる今後の展開に触れます。未読の方はご注意ください。
『ダンス・ダンス・ダンスール』とは――ここまでのあらすじ
『ダンス・ダンス・ダンスール』は、バレエへの憧れを隠していた中学生・村尾潤平が、五代都との出会いをきっかけに、もう一度バレエの世界へ飛び込むところから始まります。
潤平の前に現れるのが、幼い頃から厳しい訓練を受けてきた森流鶯です。自由な感性と爆発力で踊る潤平と、高い技術を持ちながら心に深い傷を抱える流鶯。正反対に見える二人は、ぶつかり合うたびに互いの踊りを変えていくライバルになります。
物語は日本のバレエ教室から海外へ広がり、二人はそれぞれ異なる環境で、伝統や新しい表現、けがや人間関係と向き合ってきました。才能があるだけでは先へ進めない世界で、「自分はなぜ踊るのか」を何度も問われます。
そして第33巻の舞台は、世界中の若いダンサーが集まるローザンヌ国際バレエコンクールの準決選。かつて同じ場所で競い合った二人が、多くの経験を経て再び同じ舞台に立ちます。
踊りの美しさだけでなく、登場人物の過去や恋、挫折まで舞台上の表現につながっていくのが本作の読みどころです。潤平と流鶯の始まりを知ると第33巻の踊りがより深く見えるので、未読の方には第1巻から二人の変化を追ってほしい作品です。
ジョージ朝倉さんの『ダンス・ダンス・ダンスール』第33巻を読みました。
ローザンヌ国際バレエコンクールの準決選が進み、流鶯と潤平がそれぞれ自分の過去をコンテンポラリーの踊りに乗せます。
二人が表現したものはまったく違います。しかし、過去の感情を自分の踊りへ変えていく姿からは、技術だけでは測れない表現者としての成長を感じました。
同じ舞台で過去と向き合う流鶯と潤平
第33巻で特に印象に残ったのは、流鶯と潤平がそれぞれの過去を抱えながら踊る姿です。
流鶯の中にあるのは、母・真鶴へ向けられてきた強い感情です。一方の潤平は、かつて都を好きだった頃の思いを踊りへ乗せます。
二人とも個人的な感情を出発点にしていますが、その表れ方は対照的でした。流鶯の踊りには過去から自由になろうとする激しさがあり、潤平の踊りには過去に確かにあった輝きを肯定するような明るさがあります。
コンクールは順位や技術を競う場です。それでも第33巻を読んでいると、審査されているのは技術だけではなく、踊り手が何を抱え、舞台で何を差し出せるのかでもあるように感じました。
流鶯が母への思いを断ち切ったように見えた踊り
流鶯は、母・真鶴への感情にとらわれ、与えられた振付にそのまま従うことができません。結果として、本来のレパートリーにはない動きを加えた踊りになります。
決められた振付を変えることは、コンクールでは大きな危険を伴うはずです。それでも流鶯の踊りは、ただ型から外れただけのものではありませんでした。
これまで抱えてきた母への思いを舞台の上で出し切り、自分を縛ってきたものを断ち切ったように見えます。母への感情を忘れたのではなく、それに支配され続ける自分から抜け出した、と言ったほうが近いのかもしれません。
そして、レパートリーを越えた流鶯の表現を審査する側が受け止めたことも印象的でした。自分の内側から出てきた踊りが評価されたことで、流鶯自身も救われたのではないかと思います。
都との過去を輝きとして踊った潤平
潤平が踊りに乗せたのは、都を好きだった頃の個人的な思いです。
ただし、それは都への現在の恋愛感情を示すものではなく、かつて抱いていた憧れや、二人の間に確かに存在した時間を踊りとして表現したように感じました。
過去の恋心をなかったことにするのではなく、そのときの輝きを今の自分の表現へ変える。流鶯が過去を断ち切るように踊ったとすれば、潤平は過去を受け入れ、自分の中へ残すように踊ったように見えます。
だからこそ、夏姫が現れた場面には安心しました。都への思いをあれほど強く踊っても、潤平が今好きなのはやはり夏姫であり、その気持ちは変わっていないと伝わったからです。
都への過去と、夏姫への現在は矛盾しません。過去の感情まで表現に変えられるところに、潤平らしい開かれた踊りがあると思います。
潤平と流鶯は決勝でも火花を散らすライバル
互いの踊りを強く意識する潤平と流鶯は、やはり馴れ合う関係ではありません。相手がすごい踊りを見せれば、それに刺激され、自分もさらに先へ行こうとするバチバチのライバルです。
次に気になるのは、決勝で潤平が踊るバジルです。流鶯まで同じバジルを踊るわけではありませんが、別の演目を踊る二人が舞台上でどのように競い合うのかが楽しみです。
流鶯の踊りを見た潤平が、バジルで何を返すのか。そして潤平の存在が、流鶯からどのような表現を引き出すのか。演目は違っても、互いの踊りを意識する二人の勝負を見たいです。
流鶯はワガノワとパリ・オペラ座のどちらを選ぶのか
流鶯が決勝でどのような踊りを見せるのかについても、気になる点があります。
流鶯がかつて憧れたワガノワの伝統的な踊りを選ぶのか。それとも、パリ・オペラ座で触れた、伝統を受け継ぎながら変革していく踊りを選ぶのかという点です。
第33巻のコンテンポラリーでは、決められた振付を越えて自分自身の表現を見せました。その経験を経た流鶯が、型のあるクラシックでどのような選択をするのかに注目しています。
どちらか一方をそのまま選ぶのではなく、二つの経験を自分の中で結びつけ、流鶯にしか踊れない表現を生み出す可能性もあります。
決勝は技術や順位を競うだけでなく、潤平と流鶯がこれからどのようなバレエを選んでいくのかを示す舞台になりそうです。
『ダンス・ダンス・ダンスール』33巻はこんな人におすすめ
- 潤平と流鶯のライバル関係が好きな人
- 踊りに込められた人物の感情を読み取りたい人
- 流鶯と母・真鶴の関係を追ってきた人
- 潤平、都、夏姫の感情の変化が気になる人
- ローザンヌ国際バレエコンクールの決勝を楽しみにしている人
まとめ
『ダンス・ダンス・ダンスール』第33巻は、流鶯と潤平がそれぞれの過去を踊りへ変える巻でした。
流鶯は母への思いを出し切ることで、長く自分を縛ってきた感情を断ち切ったように見えます。潤平は都との過去を輝きとして踊りながら、夏姫への現在の気持ちが変わっていないことも伝えてくれました。
次はいよいよ決勝です。潤平がバジルをどう踊るのか、そして流鶯がワガノワの伝統とパリ・オペラ座で触れた変革をどう自分の演目へ結びつけるのか。バチバチのライバルである二人の次の踊りが楽しみになる第33巻でした。
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