※この記事では『ヤニねこ』第13巻までの雰囲気や一部のエピソードに触れますが、各話の結末など大きなネタバレは避けています。
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にゃんにゃんファクトリーさんの『ヤニねこ』は、人間と獣人が一緒に暮らす世界で、タバコが大好きな猫の獣人・ヤニねこの日常を描いた漫画です。
現在発売されている第13巻まで購入して読みました。ちょいエロ、ヤニ、猫という妙な組み合わせに加えて、登場人物たちの隠しきれない猫らしさが面白い作品です。
かなり下品で人を選ぶ漫画ではあります。それでも、ヤニねこのどうしようもなさを眺めていると、なぜか続きを読みたくなります。
ちょいエロ・ヤニ・猫という組み合わせ
『ヤニねこ』の第一印象は、タイトルどおり「猫がタバコを吸っている漫画」です。ただし、かわいい猫漫画や本格的な喫煙漫画を想像すると、かなり違うものが出てきます。
ヤニねこは部屋を散らかし、風呂を面倒がり、周囲から注意されても一服を優先します。そこへ少しきわどい描写と、獣人たちの遠慮のない下ネタが加わります。
普通なら相性がよいとは思えない「ちょいエロ」「ヤニ」「猫」が同じ世界に置かれ、そのすべてがヤニねこのだらしない生活へつながっている。この組み合わせ自体が、本作にしかない面白さだと感じました。
人の姿でも隠しきれない猫の習性が面白い
作中では人間と、猫の耳や尻尾を持つ獣人が自然に共存しています。獣人たちは人間と同じようにアパートで暮らし、働き、旅行にも出かけます。
ところが、生活のふとした瞬間には猫の習性が顔を出します。自由気ままに動き、妙な場所へ入り込み、周囲の都合より自分の興味を優先する。人の姿をして社会生活を送っていても、猫属性を完全には隠せていません。
この世界では、その不思議な光景を毎回大げさに説明しません。人間と獣人が同じ場所にいることも、猫らしい行動で騒動が起きることも、当たり前の日常として進んでいきます。
設定を細かく説明するより、キャラクターの行動から世界の仕組みが見えてくる。その力の抜けた世界観も好きなところです。
「獣人生ゲーム」で見えてくる人間と獣人の世界
特に印象に残ったのは、ヤニねこたちが少し古い「獣人生ゲーム」で遊ぶ回です。一見すると、みんなでボードゲームを囲むだけの気軽な日常回に見えます。
ところが、このゲームでは最初に人間か獣人かを選び、その選択によって人生の難易度が大きく変わります。獣人を選ぶと就けない職業があり、結婚にも人間とは違う扱いが用意されています。
ゲームのルールが古い時代の価値観をそのまま残しているため、作中世界では人間と獣人が共存するまでに、差別や不平等の歴史があったのではないかと想像できます。普段は猫の習性や下ネタで笑わせる作品なのに、人生ゲームを通して世界の背景が急に見えてくるところが面白く感じました。
重い設定を長く説明するのではなく、登場人物たちが遊んでいるゲームの理不尽さを笑いに変えて見せる。人の姿で社会生活を送りながら、猫の獣人として扱われてきた彼女たちの立場を考えられる、作品らしいブラックユーモアのある回です。
ほかにも旅行、獣人村の祭り、バイト、寺、メイド喫茶など、巻を重ねるほど舞台と仲間は増えていきます。大きな物語を一直線に進めるのではなく、日常の小さな出来事から獣人たちの生態や社会を観察していくような読み味があります。
クズで下品なのにヤニねこを嫌いになれない
一番好きなキャラクターは、やはり主人公のヤニねこです。
倫理観や清潔感が足りず、妹ねこや周囲の仲間に迷惑をかけることも珍しくありません。注意されて素直に反省するタイプでもなく、同じような失敗を繰り返します。
それでも、自分の欲望に正直で、妙に生命力があります。失敗して恥をかいても深刻になりすぎず、次の一服を求めてまた動き出します。
立派な主人公とは言えませんが、作品自身もヤニねこを無理に美化していません。クズな行動には周囲からきちんと突っ込みが入り、それでも完全には見放されない。その距離感があるため、どうしようもないのに憎めないキャラクターになっています。
アニメOP「なんもねえ」も秀逸
原作だけでなく、テレビアニメのオープニングも秀逸でした。オープニングテーマは、忘れらんねえよの「なんもねえ」です。
映像では名作映画を思わせる場面が次々と展開されます。壮大で見覚えのある構図へヤニねこたちを放り込み、作品らしいくだらなさに変えてしまう勢いがあります。
何か大きなことを成し遂げる物語ではないのに、OPだけは妙に熱量が高い。「なんもねえ」という曲名まで含めて、自堕落に生きるヤニねこの姿とよく合っています。
「なんもねえ」は楽曲のジャケットも必見です。雪下まゆさんが描き下ろしたジャケットは、『ヤニねこ』をモチーフにしながら、作品の雰囲気をそのまま写すだけではない格好よさがあります。曲やOP映像とあわせて見ることで、この主題歌のために作られたビジュアルまで楽しめました。
曲中に登場する「3401」という数字は、サイゼリヤでグラスワイン(赤)を注文するときのメニュー番号と一致します。一緒に登場する「3301」も生ビールの注文番号とされており、ファンの間では、安く酒を楽しめるサイゼリヤの番号を叫んでいるという解釈が有力です。作詞者が意味を公式に説明した情報までは確認できませんでしたが、酒とタバコとだらしない日常を描く『ヤニねこ』には、妙に似合う小ネタです。
忘れらんねえよの曲では、映画『何者』の劇中曲にもなった「俺よ届け」も好きです。飾った表現で格好よく見せるのではなく、自分の思いをそのまま外へ投げるような歌詞がまっすぐで、聴いていて気持ちに届きます。「なんもねえ」にも、情けなさや格好悪さを隠さず、そのまま歌にしてしまう同じ魅力を感じました。
下品すぎる表現は好みが分かれる
注意点は、下ネタや汚い生活描写がかなり多いことです。タバコの煙や吸い殻だけでなく、風呂を避ける、悪臭を放つ、吐くといった表現も笑いとして使われます。
ちょいエロの範囲を越えて、下品すぎると感じる話もありました。かわいい猫耳キャラクターを眺める日常漫画だと思って読むと、合わない可能性があります。
反対に、登場人物をきれいに見せようとしないブラックコメディや、どうしようもない人たちの生活を笑って眺められる人には、この遠慮のなさが魅力になりそうです。
『ヤニねこ』はこんな人におすすめ
・猫耳キャラクターの日常コメディが好きな人
・ちょいエロや下ネタを含む漫画を楽しめる人
・クズだけれど憎めない主人公が好きな人
・一話ごとに気軽に読める作品を探している人
・人間社会に猫の習性が混ざる世界観を楽しみたい人
・ブラックユーモアや汚い生活描写に抵抗が少ない人
まとめ
『ヤニねこ』は、ちょいエロ、ヤニ、猫という変わった組み合わせから生まれた、下品で自堕落な日常コメディです。
第13巻まで舞台や仲間が増えても、ヤニねこは変わらず一服を優先します。人の姿で暮らしていても隠しきれない猫の習性と、失敗してもめげない生命力が印象に残りました。「獣人生ゲーム」の回では、その楽しい日常の背景に、人間と獣人が共存するまでの複雑な歴史まで想像できます。
下品すぎて好みが分かれる作品ですが、その遠慮のなさも含めて『ヤニねこ』の個性です。アニメOPで叫ばれる「3401」がサイゼリヤの赤ワインのメニュー番号と一致するところまで、酒とヤニにまみれた作品らしい遊び心があります。どうしようもない主人公を笑いながら見守りたい人におすすめします。


